「もうこれで会社に来れるのは最後になると思う」 


こんな悲しい言葉で、その会議は初まりました。 


今後の会社について、 が、 テーマです。 


社長はまず、自分が病気になり、入院して迷惑をかけてすまない。 と


頭を下げました。 そして、みんなに感謝している。 本当にありがとう。


涙を流しながら、そう言いました。 


 死と向き合っているのは、社長自身かもしれませんが、


その姿を見ている社員も同じように、社長の死と向き合っていました。 


涙が溢れました。 もう本当に涙が止まりませんでした。



社長は静かに話を進めていきました。 


「 みんなが後継者について気になっているのはわかっている 」 


「 今日、それを発表しようと思う 」  


「 その前に、少しみんなと話がしたい 」


そう言った社長は、一番手前の社員から一人ずつ会話をしていきました。


その時、問いかけた質問は、


「 今の会社の状況をどう思うか、本音で話してほしい 」


でした。 


みんな思い思いに話しました。


社長なしでこれからやっていけるのか不安です。


会社がどうなってしまうのか不安です。


自分の生活は守られるのか不安です。 


その他にも、たくさんありましたが、 


ほとんどの社員が、

不安であるということを社長に話していました。 

俺はそれを聞いていて、それはちょっと違うんじゃないか?

ずっと思ってました。 

俺は不安なんて、まるで感じていませんでした。 

それは、自分自身の窮地を自分で打破してきた、

その経験があったからかもしれません。 

でも、この会社には

お客様も

仕入先も

社員もいる

仕事が出来る環境がある。

企業としての歴史もある。

全てあるんです。 

常に順調に来たわけではありません。

その時代その時代の苦労があって

今の会社があるんです。

問題なのは、働く社員、

その個人個人の意識だけだと俺は思いました

社長が俺に問いかけました。

「 今の会社の状況をどう思うか、本音で話してほしい 」

俺は言いました。 

「 今の状況は、お客様、仕入先、会社に携わる人間が、


  この会社はどうなるのか? それを見ているはずです。


  ある意味では注目されている状況だと思います。 


  ここで働く社員が、そういう意識を持ち前向きに取り組み


  成果をだすことが大事だと思います。 


  社長は病気と向きあい戦っています。 


  社員もこの状況と本気で向きあい、受け止め、そして


  前に進むべきだと考えます。 


  不安を解消する方法は、まずは前向きな姿勢で取り組むこと


  それ以外にはないと思います。 」  


不安を話した人間から見れば、

何言ってんだよって思われたかもしれませんが

自分の本音を正直に話しました。 

自分の思いを爆発させました。

一通り、社員との会話が終わり、最後に息子に社長は話しかけました。

「 今の会社の状況をどう思うか、本音で話してほしい 」  

ここで息子は、

「 特に何もありません。 まだ入ったばかりだし・・・」  

これだけでした。 

正直ビックリしました。 この状況でそれだけの発言。 


少なくとも、自分が後継者だという自覚は感じられませんでした。 


入ったばかりだろうと、自覚があればもっと一生懸命話すべきだし


たとえ文章ぐちゃぐちゃでも、その熱意だけでも相手に伝えるべきです。


自分が後継者だと日々の中ではそう感じるような振る舞いだっただけに


残念な気持ちでした。 


俺はやっぱりついていけないと改めて感じていました。 


社長も残念そうな顔をしていました。 


そしてしばらくの沈黙の後、社長は口を開きました。


「 みんな本音で話してくれてありがとう。 


  全員と話をしてみて俺の気持ちは今日固まった 」 


「 後継者、次期社長には○○君(俺)を指名する 」
はいはてなマークはてなマークはてなマーク 
「 今まで後継者については、俺の息子を考えていた。 

それが当たり前だと俺も思っていた。

でも、今の時代、息子だからではなく、やれる人間が

やるべきだとそう思うようになった。

○○君(俺)
を見てて 」 


頭がおかしくなりそうでした。 


俺の名前だよなぁ?社長間違えてるのかなぁ?いや間違えるわけないしなぁ?


頭も心もパニック状態。 もう意味わかんねぇ叫び 


これが指名された時の正直すぎる気持ちでした。 


事前に聞いてれば違うでしょうけど、

い き な り  ですよ。 


生涯で一番ビックリした事はこれに決定です。 


「 ○○君(俺)、お願いできるか? この会社を」 


もう究極ですね。 今、決めるしかないのか???

 みんな見てるし・・・ 

視線が痛い、痛すぎる。  

俺はパニック状態の頭をフル回転しました。

本当、煙でそうでしたよ。 

10秒。約10秒の間に俺が出した答え、

それは、

「 わかりました。 お受けします。」 <でした。

「 少し時間をください」 

この言葉はあえて使いませんでした。 

だからと言って適当な気持ちで言ったわけではありません。

今まで自分が苦難な状況の時

俺は必ず前に進むことを選択してきました

その場から逃げず、弾き飛ばす事ができなくても

それを受け入れ、自分なりに処理しながら進んできました。  

今回の事は今までにように苦難ではなく


これは自分自身のチャンスのはず。 

そう思ったんです。 だから受けました。 

「じゃあ、これからは彼を中心に頑張ってくれ」 

社長はそう言い、会議は終了しました。 

続く。