2代目社長の様子がおかしいのはあきらかでした。


朝の咳き込み方が、ちょっと普通じゃありませんでした。


「 風邪かなあ?」 咳が収まるとそう言っていましたが、


「 病院行った方がいいですよ?」 


みんなから言われてましたが、病院嫌いで、


いつも忙しいから行きませんでしたね。


社長は64歳でしたけど、体も丈夫で、風邪引いたのだって


僕が一緒に働いてる間、一、二回しかぐらいしかなかったと


思います。 そんなだったので、病院に行ったのは結局だいぶ


悪くなってからになってしまいました。


検査をして、検査結果が出る日、夕方に病院に行くと言い残し


社長は出かけました。 


そして、1時間、2時間が過ぎ、


「社長まだ帰ってないの??」  


そんな声がちらほら社員から聞こえてきました。 


必ず会社に帰社してから自宅に帰る社長でしたので、


みんな不思議がっていました。 


夜8時を越えたころからは、何かあったんじゃないのか?


そんな心配の声になっていきました。 


携帯もつながらない。 


だけど、病院に行っているのは間違いない、


何か悪い病状だったんじゃないのか? 


みんな、そう思ってたんだと思います。 


だから、それ以上、連絡を取ろうとは誰も


しませんでした。


何かある。 


みんなそんな思いで帰宅しました。 


そして翌日の朝。


いつも通りの雰囲気でないのは、誰でも察することが


できるくらい社内は静かでした。


社長から全員集合するよう伝達がきました。


嫌な予感は社員全員が感じていたはずです。


そしてその予感は見事に的中しました。


「 みんなに話がある 」

その暗い表情からはいろんな言葉が想像されました。


なんだろう? 


次の瞬間、


「 昨日、病院に行って検査結果を聞いてきた 」

「 病名は肺がんだった 」 


肺  ガ  ン 汗


「 初期の段階ではない。これから治療に入る、○月○日に入院することになる 」 


一気に話す社長の言葉が、うまく脳内で処理できませんでした。


自分以外の人間も同じだったと思います。


「 みんなに選択してほしい、


会社を継続するのか? これで廃業するのか? 」 


ここまで話した後、し~んと静まりかえりました。 


話した社長も、社員も、みんながうまく理解できていなかったんだと


思います。  時間が止まりました。 


中小企業は大企業と違い、やっぱり社長あっての会社というのが


ほとんどです。 弊社もそうでした。 


その社長が仕事できなくなるということは、どういうことなのか?


そんなこと、その時まで考えたことありませんでした。


突然の発表に誰もが動揺を隠しきれませんでした。


「 明日の朝までに、返事がほしい 」 


そういい残し社長は席を離れました。


こうやって書くと、なんて無責任な社長だって思う方も


いるかもしれませんが、今思えばこれは、


社長からのテストだったように感じます。


継続するのか? 廃業するのか?


社長は継続してほしいに決まっています。 


大事な会社なんですから。


でも、ここで決断ができないんであれば


廃業した方が社員にとっていい事だと考えていたと思います。


覚悟ができるのか? できないのか? 


それを問われたんだと僕は思います。


考える時間は一日。


僕の答えは、その話が終わる頃には決まっていました。


継続させる  に決まってます。


アルバイトで入った自分ですが、30年以上も歴史のある会社です。

何よりお客様があります。

そして、この会社を作った初代社長、この会社を育てた2代目社長

はじめこの会社を支えてきた歴代の社員たち、現社員たち、

みんなの思いが詰まった会社です。 廃業なんてです。

それが僕の思いでした。

しかし僕の思いとは正反対の社員もいました。

自分の生活はどうなるのか?

給料はちゃんとでるのか?

早く次の仕事探さなくちゃ?

全部 自分のことですね。

実際 土壇場になると、その人ってものがわかってきます

どちらがいいとかそんなんじゃなくて、そういうのが見えますね

そんな、それぞれの一日が過ぎていきました。

続く。